きんつば物語
かつて父親が、「お母さんは「きんつば」が好きだ」とドラえもんを読む私に教えた。
後に、母親の証言で「別に嫌いじゃ無いけど、好きと言った覚えは無い」ことが判明。
なのに。
なのに、父親はそれ以来、事あるごとに「きんつば」を買ってきた。
お笑いでいう「天丼」と呼ばれる、繰り返しのギャグのようで
2回目くらいまではまだ皆で笑ったような気はする。
しかし父親は何か思い出したように、スーパーで見かけたりすると
「これお母さんの好きなやつや」と子供に教えて、きんつばを買っていた。
当時は何も感じなかったけど、今振り返るとちょっと怖い。
考え出すと怖いというか、変なオッサンなのだ。
「花見がしたい」と何度も懇願してくる子供に耐えかね、
植物園に連れて行くようなマッドなヤツでした。
私が最後にきんつばを見たのは、
父親が母に「嫌いやっちゅーてんのに」と言われた時だと思う。
「嫌いじゃないけど」から、完全に「嫌い」になったよう。
始末に悪いのが、誰か食べりゃ良いのに誰も食べない。
食べないというよりかは存在を無視してる感じだった。
父親に至っては「お父さんきんつば嫌いや」と抜かしてけつかる。
食べられる事も、捨てられる事もなく独りたたずむきんつば。
ちびまる子ちゃんのoutro的な風景だった気がする。
日に日に、親の姿が遠のいていく今日この頃である。
正解を教える役目だと思った人達にその能力が無かった事に驚いたりもする。
遠のいていく両親という不思議な存在。
永きに渡り、ず〜〜〜〜っと続いてる縁故関係の歴史。
人間って何のために産まれてきたのですかね〜〜?笑
今こそ良コラ
M・A・D