煙のゆくえ
ポール・オースターという詩人で、小説家が居る。
先日、彼の誕生日が2月3日で、自分と同じことを知った日、「SMOKE」という映画の脚本を彼が書いていたことを知る。
「SMOKE」という映画も様々な偶然が交錯する物語。
高校2年生の頃にsmokeという名前を授かった自分が、学校の帰り道に寄ったレンタルビデオ屋でこのタイトルを発見した時から出会いはいつも突然と偶然だった。
興味を持って入った場所が、逆に自分を引きずり込んでくる、そういう日々。
ここ数日、ごうごう窓を揺らす風の音がうるさかった。
仕事からの帰り道も、地面に新鮮な木の枝が耐えきれず引きちぎられていた。
太い枝を踏みながら帰るのは面白い。
無邪気さだけが罪悪感を解放する。
家に清涼飲料水がないので、帰路にある自販機に寄って。
僕がまだ子供の頃から、夕方より夜間にかけてヤンキーがたむろする事が問題視されていたスーパーを有する敷地は、ついに何人も侵入できないように策を用意した。
その策も口を開けていた。
クレイアニメのように忙しくガチャガチャ揺れながら。
看板だって前のめりに倒れ込む。
すかさず落ち葉が降り積もる。
スーパーがある敷地内には10年ほど前から独立した煙草屋ができた。
煙草屋の真裏には散髪屋があり、煙草屋のオヤジさんはそこで理髪師もしている。
身なりが綺麗で、白髪が多く、若い頃は男前だったに違いない、綺麗な二重まぶたと自然な微笑。低過ぎない声。
普段店先には息子とみられる無愛想だが、商売には精を出している人が立つことが多い。
オヤジさんも煙草の自販機に自ら補充作業をしに行ったり、よく買いにくる人には明るい笑顔で挨拶をしていて、そこで僕らは知り合いになった。
散髪屋の横には大阪にしか生息しないタイプの顔をしたイカツイ、性格のキツそうな、声の枯れたオバちゃんが本屋を営んでいる。
確認したわけでもないのに、煙草屋のオヤジと本屋のオバちゃんは夫婦だと知っている。
僕はここのオバちゃんが苦手で、あまり寄り付かなかったけど、近所で買うのが気のひけるエロ漫画などを親の財布から盗んだ金で買う糞餓鬼だった。
しばらく巧妙に切り抜けていた盗人容疑はバレ、親に頭のカタチが変わるくらい殴られた。
小学5年生の頃、遊人先生にこの本屋で出会った。
店頭販売は頼もしく、僕にとって「煙草屋」が内包している全部が魅力的だが、このお店は品揃えも素晴らしい。
田舎町では「これがあればいいでしょ」という品揃えが当たり前なんだけど、大抵の煙草を手に入れることができた。
昔に比べるとだいぶその種類は減ったように感じたけど、それでも豊富な品揃え。
禁煙をする前からここの品揃えを信頼していて、喫煙者にはとりあえず紹介していた。
当時、taspoもここで作った。
煙草屋のオヤジさんはたまに僕が働いている喫茶店に来てくれる。
オヤジさんが来た日は、オヤジさんと一緒に、ジム・ジャームッシュの「コーヒー&シガレッツ」 の登場人物になれた気がする。
街の顔役のような、金持ちで物持ちのお爺さんが、オバちゃん連中を引き連れて来ない日、たまに煙草屋のオヤジさんとやって来る。
「お兄ちゃん最近来てくれへんやんか」
数年前、レジで話しかけられ
「実は何年か前に煙草やめまして」
そう答えた時に誇らしげだったのをよく覚えている。
ある意味で、悦に浸って喋っていたのも思い出せる。
またこの店に通っている。
最近は巻きたばこに興味があります。
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