電気が止まったでござる
正確には、
うちに帰って玄関の電気をつけようとしたら止まってるのに気づいたでござる。
ござるじゃねぇよ、ボケ!
のお声かけありがとうござる。
私が、スモークです。
ボケです。
社会不適合者の烙印を押されて尚、生きながらえております。
そんな馬鹿なと、急いで暗闇から取りいだしたる電池式のランタンを灯す。
ケミカルに輝くLEDライト。
情けなさに一縷の涙をこぼすフリなどしながら、その辺を引っ掻き回すと支払い票が見つかる。
仕事着のまま、即刻コンビニへ向かい支払いを済ませ、勿論、夜中に電話対応などしてくれるはずも無いので、その日はお寝んね。
翌朝は爽やかな快晴の中に目覚め、電気の開通を心待ちにする。
点かない。
なんどい?
正午を過ぎた頃に痺れを切らして電話をかけると、受話器の向こうから「おのれ先月分も滞納しとるやんけカス。殺すぞワレ」の声。
そんな馬鹿なと思い、またそこらを引っ掻き回すも支払い票の類は出てこない。
そうは言っても、電力会社の方がよっぽど管理が行き届いているのには違いなく、遅延分の支払い方を懇切丁寧に教えて頂く。
「しばらくそのままでお待ちください」と言われ、とても聞いてられない、軽快な保留音がしばらく流れる。
各電話機メーカーさんはもっとマシな保留音が用意できないのだろうか。
昔、坂本龍一さんが電話のプッシュ音や、レンジの「チン」みたいな、生活に根ざした、なんでもない音を作りたいと仰っていた気がするけど、早急にお願いしたいものだ。
「まぁでも、これでやっと冷蔵庫が復活する。冬で良かったよ」などの思いから脱力。
煙草に火をつける際に指が画面に触って電話が切れてしまった。
・・・
スマートフォンの弊害だと責任転嫁。
しかし、このくらいで諦められるくらいなら最初から恋などしないのが人間だ。
初恋の気持ちで、再度、電力会社に電話をかける。
勿論違う担当者なので、また1から個人情報の聴取を受け、やっと支払い方法のくだりに到達。
11桁の番号と、4桁の番号をロッピーに打ち込み、出てきた明細をレジで見せて支払うとのことで、早速メモ。
こういう時に大体番号の類を聞き間違える自分を知っている頭脳明晰、シッカリ者な私は、こちらから、番号の復唱も欠かさない。
間違いないと分かり、ダウンを着て靴下を履いて、玄関を出ようという段になって電話が。
電力会社からである。
声の主は先ほど手違いで切ってしまった電話口の女性だった。
またアレコレと経緯を説明して、「もう11桁の番号やらも分かったから今からコンビニに行きますよ」と伝えると「11桁の番号を教えろ」という。
何事かと思うが、言われた通りに番号を伝えると「その番号は違う」などとのたまう。
瞬時に底意地の悪い私は、仕事上のノルマ争いの類いに巻き込まれた可能性を疑うが、「まぁ先に電話口にたったのはこの人だし・・」と無情を感じながら言われた通り、全く別の11桁の番号を入手して、改めて、コンビニに向かおうとすると、電話口の女性が驚くべき事を口にした。
「先月分の支払いが済んでいないのは確かだが、貴様は先々月の電気代をも滞納しておる」と。
驚愕して、そんなアホなと靴を脱ぎ、またその辺を引っ掻き回すが、用紙の類いは見つからない。
おそらく掃除をした時に一緒に捨ててしまったのだろう、か。
無法者ぶりに激怒した電力会社から、支払いを済ませた後も、3日に1度くらいの割合で電力を遮断されたりの嫌がらせも受けたくなかったので、平身低頭に謝罪を述べ、改めてお外へ。
「千円そこらの金額を2ヶ月も滞納していたとは恥辱の限りでありますなぁ」とヘラヘラしながらママチャリをコンビニへ投げ飛ばす。
ローソンに向かう道中は久々の快晴でお散歩気分。
ルンルンでロッピーに11桁を打ち込む。
「そんな番号は知らん。いちびってたあかんどガキ」
何度やってもロッピーから激しい罵声を叩き込まれる始末。
おかしい。
三度、電力会社に電話をするも、やはり担当者が違うので、また1から個人情報を伝えて、「しばらくおまちください」となり、何度聞いても不愉快で、軽快な保留音楽を聞きながら待つ。
やっと電話口に現れた女性はまたも「その番号は間違えている」と言うではないか。
そうとう熾烈なノルマ争いが行われているのだろうか、と思うが早いか「それはクレジットカードでの決済時に使う番号だ」という。
意味がよく判らない私。
「この際クレジットでもロッピーでもなんでも良いんだけど」と喉まででかかって、「いや、滞納していたのは自分であるから」と思い直し、素直に新しい11桁の番号を聞き出す。
どんなことで相手の機嫌を損ね、3日に1度の停電の憂き目に晒される可能性があるやもしれぬのである。
平身低頭を心がけ、また11桁の番号をロッピーに打ち込む。
今度の番号はロッピー様も承諾してくれて、レジでお金を支払い、親切に電話口で待ってくれていた女性に支払いと同時にその旨を伝える。
「最大1時間半後までに再開する」と言われ、やっと胸をなで下ろす。
コンビニで久しぶりに立ち読みなどしながら、漫画業界に吹き荒れる「グルメブーム」に舌鼓を打つ。
清野とおるさんまでもが食べ物に関する漫画を書いてらっしゃるのだな。
だいぶ編集者から注文があるんではないかと邪推してしまう、テンションの高い漫画だった。
コンビニで煙草を求め、フラフラ家に帰ると、丸メガネをかけた気の弱そうな若者が電気系統をいじっている。
「もしかして電気やってくれてます?」と声をかけると「もうつきます」と教えてくれた。
果たしてドアを開けると、昨晩からつけっ放しになっていた玄関が明るく光っていた。
「やったー」と、靴も脱がずに玄関でしばらくモンキーダンスを情熱的に踊ったのち、はたと我に返って、電力会社の兄ちゃんに缶コーヒーでもやろうと家を出ると、丸めがね君は既に他の現場に向かった後だった。
その「おこだわり」、俺にもくれよ!!(1) (ワイドKC モーニング)
- 作者: 清野とおる
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/06/23
- メディア: コミック
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調べたら「その『おこだわり』〜」はドラマになるらしい。
ドラマ。。?