半年経って、あと2ヶ月
2ヶ月後、いわゆる「口に糊する」という状況が待っている。
簡単に、貧乏になる、という意味の言葉。
アラビックヤマトで口を貼り合わせるからご飯が食べられないという意味ではないそうだ。
「糊する」とは、「おかゆをすする」という意味らしく、おかゆくらいしか食べる物が無いひもじい状況を現しているらしい。
そんなこた、どーだって良い。
あぁ6月後半。
一年が半分過ぎようとしている。
あと2ヶ月で働き口が無くなる。
無職になって、口に糊するまで2ヶ月前になってしまった。
広末涼子歌うところの、KN2、口に糊する2ヶ月前だ。
彼女は、私が今よりもっと何も考えないで惰眠を喰らい続けた小中学生の頃、「マジで恋する5秒前」という曲を歌っていた。
この言葉は東京の盛り場に頻出していたギャルと呼ばれたお姉さん方が考えた造語、MK5(マジでキレる5秒前)が元ネタとなっている。
この頃同時に出現した「コクル(告白する)」という言葉には、無垢な童貞心にビンビン反応するものがあった。
「告られてみたいもんだ」と心底思った。
放課後、昇降口、下駄箱辺りをウロウロしてたら誰かに告られやしないか。
はたまた自分の下駄箱に純真な少女から恋文が入っていないだろうか?
サッカー部の連中が女子から貰っている、ひと工夫して折りたたまれた四角い手紙には何が書かれてあるのだろうか?
部活動に励む生徒達の声を聞きながら、人気のなくなった校舎をウロウロする自分はさぞ気持ち悪い存在だったろう。
「♪ずっとまーえーか〜ら〜 彼ぇ〜の〜こと〜」
友達もおらず、部活にも入らず、虫ばかり捕まえていてアイドルにもとんと疎い子供だったが、広末涼子さんを見て「可愛い人が世の中にはいるもんだなぁ」と随分感心したのを覚えている。
CMに映る彼女のショートカットに、新しい時代の気配を子供ながら感じていた。
違う違う違う。どうでも良いどうでも良い。
定職が無くなる。
その事が、どれほどのことを意味するのか、私は今もって真剣に捕らえられていない。
数ヶ月前にも、「なんとかなるやろ」としか考えてないと書いたが、今も同じ状態だ。
お前はいつもそうだ。
ケツに完全に火が着き、背中にまで燃え広がる頃になってやっと、あまりの熱さと、自分からすると謎の自然発火に半泣きで身悶え、哀れに暴れ周りながら「しもたー!」と準備不足と行動力の無さと意志の弱さを呪っている。
MK5が全盛の頃、当たり前のように夏休みの宿題に手をつけなかった私は、8月30日になってオロオロ、オタオタしていた。
不良として「宿題なんざタリーんだよ!」という覚悟があったわけでは全くなく、ただ、何も考えていなかった。
ひと夏かけてデカいカマキリを探していた。
30を過ぎた今、自発的なカマキリ探しはやめたものの、先のことは考えていないままなのである。
もう教師に怒られる事こそないが、生活が立ち行かなくなるのだ。
怒ってくれる人もおらず、ただ没落していくのみである。
メソメソして、押入れから坂口安吾の「堕落論」を取り出し、こうなったら徹底的に堕落の道を歩もうと決めてページをめくる。
真正面から堕落を受け入れる難しさがそこには書かれてある。
「こんなん無理やわ」と、諦めに関しては一流の意思決定力で即、堕落の途を諦めた。
不良にも、オタクにもなれなかった自分をたまに確認する事がある。
まして真面目に生きるなんて、考えただけで眠たくなった。
そのくせ、「普通に生きるのは面白くなさそうだ」などと、努力ばかり嫌がって、ただ好き勝手に時間をドブに捨て続けて来た。
結果、楽しく生きてます。
(19x)MajiでKoiする5秒前 - 広末涼子 진심으로 사랑하기 5초전 - 히로스에 료코