-kemurikikaku-

ママチャリに乗った小っちゃいオッサンの日記

「CLOCKeRS」を見た

 

黒人社会の抱える問題を見せてくれるスパイク・リー監督の95年作品。

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ニューヨークブルックリンで麻薬密売組織のボス、ロドニー・リトルと敵対する麻薬ディーラーが殺された。ニューヨーク市警察の刑事ロッコとラリーが捜査を進めていると、ヴィクターという黒人の男が殺害を告白した。ヴィクターは真面目な働き者として有名だったが、彼の弟ストライクはロドニーの手下の麻薬ディーラーだった。ロッコはヴィクターが弟をかばっていると推察して組織への陽動作戦を展開、ストライクとロドニー一味を追い詰めて行く。

 

wikipediaのあらすじだけ読むと、ハリウッド的なドンパチ物を想像してしまいそうだが

本作はまるでそんなものとは違い、ずっと冷静で冷酷で、恐ろしいくらい日常的だ。

ドキュメントのような負の連鎖を描かせるとスパイク・リーは本当に凄い。

平和な日本の片田舎で見ていても背筋の凍る思いをさせられた。

とても自然な演出で、言葉では大袈裟に聞こえる社会の闇をたんたんと見せられます。

 

冒頭、ストリートで売人をする主人公達の日常会話から、監督のメッセージが始まっている。

「人殺しもレイプも、女すら殴らないヤツ、過激なラッパーなんて言わない」

「夢や希望を歌ってなんになる?現実は甘くない。世の中セックスと暴力だ」

スパイク・リー監督は「ドゥ・ザ・ライト・シング」でもハーレムにはびこる

暴力と報復の虚しさや、無意味さを散々扱って来た。

しかし、現実社会で子供達は未だ「過激な存在」を偶像崇拝している事を告げている。

中には「希望や夢も悪くないだろ ?」と希望を持つ者も居るが、抱える問題の闇は深い。

 

死体写真が何枚も何枚も映し出されるオープニングシーン。

現場で死体を調べる刑事達が楽しそうにお喋りしたり、ランチの話で盛り上がる。

それくらい殺人が日常茶飯事だという事を現している。

 

「ストリートでハスリン」というのは「路上でドラッグを売って生計を立てる」

というような意味だと思うが、どこまでいっても「ハスラーライフ」なんて物を

体験した事があるわけもない自分にはまさに遠い異国のお話だ。

 

しかしコレは実際に世界中で(日本でも)今現在も行われている事で、

特に銃社会のアメリカでは「ハッスル」にまつわるもめ事で頻繁に殺人が行われている。

アメリカ人にとって、これほど胸をざわつかせる題材はなかっただろうと想像する。

ニューヨークのハーレム地区についての社会見学としても鑑賞出来る作品だ。

 

映画の内容としてはクライムサスペンスのような要素が強い。

これをドキュメンタリー映画のように見るのは少しモノを知らなさ過ぎると、

在米人には思われてしまうかもしれないけれど、

それくらいこの映画が持つ問題提起の力は凄まじいという事でもあるのです。

 

物語終盤で刑事の話す言葉はそのままスパイク・リーの代弁と言えよう。

成績がいいと同級生にからかわれる?

正しい言葉を話し、勉強するのはダサイか?

真面目に生きようとすると脅される

そんなモノに屈してはいけないとメタ視点のような映像でストーリーと交差させる。

 

映画の中で何度も「銃を捨てよう」と書かれた看板が出て来るのですが、

まさに百害あって一利無し、自由の国の持つ自由過ぎるやり方が招く、

自由の代償をスパイク・リーがこの映画でも鋭くえぐっている。

 

面白いと思ったのが、振り返ると登場人物全員の良い所と悪い所を見せている。

悪人の良い所や、善人として登場する人の「えっ」てなる部分。

誰もが当然持ち得る性格や性質の揺れがドキュメントタッチに見せるリアルさを出すのかも 。

暴力や貧困の中で出来た新しい常識というか、光と影をクッキリ見せた人物描写も見所です。

 

この曲で映画の存在を知ったクチですが、久しぶりに聞いても痺れます。


Crooklyn Dodgers 95 - Return of the Crooklyn Dodgers - YouTube

 

映画とは関係ないけど、

刑事役のハーヴェイ・カイテルは僕と同じ名前の「SMOKE」という映画で

主人公をしてて、そちらも良い映画でお勧めなのです^^

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