大伴昌司とは
ご存知ない名前かと思いますが、その昔、講談社に大伴昌司(おおともしょうじ)という変わり者の編集者が居た。
彼のことは知らずとも、こういった怪獣なんかの解剖図を見たことはないだろうか?
これを始めたのが大伴昌司氏だと言われている。
なんでも中身を見せたくなっちゃう(解剖しちゃう)オジサンなのだ。
簡単な人物説明をすると、大伴氏はウルトラマン以前の
「ウルトラQ」が企画書段階の頃から円谷プロと仕事をしていた人で、
「ウルトラマンは地上で3分間しか戦えない」という設定を作ったのもこの方だという。「怪獣ブーム」の火付け役の一人と言える重要人物で、彼らが作った「怪獣図鑑」は空前の大ブームとなり、かの皇太子殿下も読まれたとか
先日「だまし絵」について少し書いたけど、エッシャーやマグリットを日本に紹介したのも大伴氏だったりする。
あと、いま知ったけど誕生日が一緒だった!なんか嬉しいw
しかし、円谷氏は「『怪獣図鑑』は子供の夢をなくす」と考えていたらしく、1967年に出た「怪獣解剖図鑑」をめぐり、大伴氏は円谷プロを出禁にされている。
後に、氏は円谷プロの許可なく解剖図を勝手に考えていたことが判明する。
ここが理性で止められない、というのが最大のヤバさだと思う。
また同年「ウルトラセブン」の放送禁止回として一部で有名な、「遊星より愛をこめて」に登場するスペル星人に「被爆星人」と名づけたのも彼だそう。
大伴氏はその後も様々な解剖図を世に出すだけで無く、元々出身のSFやホラーの世界を紐解いた「魔女の世界」「地獄入門」など、当時の子供達を興奮させるのに自分の力を発揮した人物でもあった。
大伴昌司登場以降、様々な物が解剖図解される事が当たり前になったことを、みうらじゅん氏はラジオで「大伴さんの"せい"だよね」と話している。
同番組で、山田五郎氏は得体の知れないモノを解剖して図解する事を「大伴昌司主義」と呼び、イズムであると定義していた。また、氏の解剖図解への興味は恐らく「性的指向」なんだろうと結論付けていて、想像すると大伴昌司氏の秘めた欲望、願望みたいなモノに身震いする。
本当に変わった人だったみたいで、仲間内で誰が一番最初に死ぬか真剣に賭けてたり(自分が最初に36歳で死んでいる)、みうらじゅん氏が生家を取材しに行った際に実母から見せられたのは今で言うアイコラで、奥村チヨ等の顔に裸のグラビアを貼り付けたコラージュ作品をまとめたノートが出てきたのだという。
みうらじゅん氏もアイコラを「エロスクラップ」と呼び、アイコラの無かった子供の頃より現在も続けている。先輩の世代で既にやられていたと知って感服したそうだ。
みうらじゅんさんの話を聞いて、氏が生涯独身だったと知った時に僕は一つの仮説に至る。大伴氏は童貞に育まれた怪獣なんじゃないか?と。極めて荒唐無稽ですがたわ言を聞いて欲しい。これは実際に童貞かどうかは関係なくて、童貞心をどれだけ強く持っていたかが重要になってくる。僕は、童貞とは想像する事だと思っている。
童貞が持っている変態性欲に果ては無い。また「満たされていない」状態も、童貞と近いモノがあると思う。コレはハングリー精神にもよく似た状態だろう。
「満たされない」持たざる者が、想像力の限りを尽くして、欲望の感じるままに想像を脳内で創造する。そこに一切の遠慮や気負いは無く、何処までも自由に想像の世界を飛び回る事で生まれるのは、自身にとって真実の理想郷なのだ。どんなにそれがイビツなものであろうとも、僕はそれこそが本当にオリジナルな表現なんだと確信している。
仮に、なんでも解剖しちゃうのが、本当に性的志向だとすると、決して満たされなかったそれらと表現がスムースに合致するのだ。 「少年のような心」とは似て非なるモノなのですが、少年が持つ、無垢で、狂気を感じる好奇心がキーポイントになっている。
以前は童貞だったアナタも、もしかすると覚えているかもしれない。この「怒り」に非常によく似た力を表現にぶつける事でとんでもない化学反応が生まれる事をずっと考えている。
「少年マガジン」「ぼくら」オリジナル復刻版 大伴昌司《SF・怪獣・妖怪》秘蔵大図解
- 作者: 紀田順一郎,講談社
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/10/18
- メディア: コミック
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