サンドバッグの時間
ドランクドラゴンの鈴木さんが良いことを仰ってました。
別にネットで炎上してもいいんですよ。
俺の本当のお客さんは、仕事をくれるメディアの人。
氏がメディアの中にいながら、外の人たちの言葉と随分戦ったことが推測される。
最初から鈍感な人っていう可能性もあるけど、鈍感でもやっぱり人は言葉で傷付く。
文句を言うお客さんを「厳しいお客さん」と言い換える事がある。
まとめて一言で「馬鹿」と切り捨てる方もいる。
ある芸人さんがこういった事に関して、「芸人は厳しいお客さんに育てられるとか言うしね」と諦めを言葉に含ませて仰っていた。
鈴木さんも「厳しい」人達のサンドバッグになりながら鍛えてきた精神や胆力があるんだと思う。
書くと簡単だけど、全国区のテレビに出ることで現れる私たちの想像できない量の「厳しい」人たちを横目に、「自分のお客さんではない」と振り切るのに辛い時間が流れたことが想像できる。
近年、意図的に厳しいお客さんを前にする「MCバトル」というエンターテイメントが盛んだ。
「MCバトル」はラップでやる言葉の殴り合い。
ほとんどの場合、その場にいるお客さんが勝ったと思うMCに歓声を上げて勝敗を決めるシステムを採用している。
お客さんは自分達も参加してかぶりつきで見ているので、嫌でも厳しくなる。
MCバトルを見てると勝ったMCはもちろん、負けたMCにも大きな拍手を送りたくなる。
これは格闘技を見てるときと同じ気持ちだ。
大勢の厳つい観衆の前に出て、挑発的であったり、強い言葉を面と向かって吐き出すには強い精神が必要なのが嫌ってくらい伝わってくる。
しかも大きな事を言った後に、テクニカルに核心をついた事を言われて負けることもよくある。
バトルの最中に今の言葉で試合が決したんじゃないかと思わず感じてしまう事も少なくはない。
同時に、こっちの勝手な思惑をひっくり返して、勝ちを得たMCが次の勝負に駒を進める姿が見たくてたまらない。
負けはMCに見えない烙印を押す。
そこからまたすぐに這い上がって来ないと敗者の烙印を押されたままになってしまう。
だから何回でもチャレンジする姿が感動を呼ぶ。
前回、大敗を喫したMCが次の試合で涙が流れるくらいの勝ちを奪取することもある。
そのドキュメントを見て興奮するのは、もはや人間のサガといって差し支えないだろう。
しかもコレは力と力ではなく、知性を使った言葉のやりとりだということにも痺れる。
この場に立つだけで強い心が試される。
誰もが足がすくみ、逃げ出したくなる場所に立つことで己を奮い立たせる瞬間がある。
逃げないことが全ての始まりだと教えてくれる。
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