詩人の会で土井玄臣さんから「smokeはB級のベニスに死す」というあだ名を貰う。
1971年イタリア・フランスの合作映画。 監督はルキノ・ヴィスコンティ。
静養のためベニスを訪れることにした老作曲家。そこで出会った少年・タジオに彼は理想の美を見出す。以来彼は、浜に続く回廊をタジオを求めて彷徨うようになる。
私は積み本もするのですが、積みDVDもかなりあって、その中にこの作品があるのを覚えていたのでこの機会に見ることに。
方々で聞いたタイトルだったこともあり、音楽の名盤なんかと同じくタイトル買いしていた今作。
感性のショボさのせいか、そこまでグッとくることはなかったですが、見てよかった。
出てくる美少年は本当に美しく、私をB級と称してくれたのはかなり優しい判決。
ふつくしい・・
美少年に惚れるおじさんがこちら。
彼は才能の枯れた有名作曲家で、芸術作品に究極の美を求めて人生最後の岐路をさまよっていた。
しかし体も弱り、養生のために訪れたヴェニスで究極の美を体現した美少年に出会う。
笑ってしまうような白塗りの化粧をして、髪と髭に白髪染をしてもらい、胸には花まで挿して少年を見つめ、追いかける怪しいおじさん。
彼には妻子があり、ホモセクシャルではないのですが、どれだけ求めても作り出すことが出来なかった「美」そのものに心を奪われて暴走してしまう。
知ってか知らずか、いつも気づけばすぐ側で不敵な笑みを浮かべ、おじさんの心をかき乱す美少年。
このギター弾きも極端な醜男として描かれていて、美少年との対比を殺生なくらい出していた。
最初は同性愛映画かと思って見てたけど、直接的なシーンはほぼなく、最後の方でようやくこの映画が老いへの恐怖、若さへの渇望を表現していることに気付く。
掟ポルシェさんは「究極のアイドル映画」だと評しおり、ラストシーンでは、醜い男がアイドルを見ながら「萌え死ぬ」構造に酷似していると仰っていたそう。
アイドル文化に暗く、萌え死ぬ感覚を体感したことがない私でも膝を打つ表現。
ラストシーンで頭から流れ落ちるのは血ではなく、白髪染めの黒い液。
きらめくベニスのビーチで美少年が男友達と喧嘩する姿に震えながら心を千々に乱すおじさん。
若さの中で輝く一瞬の美を知る映画でした。