Ryu's Bar
長いです。
よく言われることだけど、テレビは面白くなければならなくなって、もう随分時間が経った。
作家の村上龍さんがホストをつとめる「Ryu's Bar」という番組が昔あった。
この番組が面白くないと言ってるわけでも、メチャクチャ面白いと言ってるわけでもなくて、「こういうの減ったよね」というお話。
番組内では淡々とした時間が流れていて、なんとかして笑わそうというのがなくて、自然体。
笑うときも自然だし、話によってはシリアスにもなる。
友達や知り合いとジックリ話をしているようなテイストの番組。
画像の忌野清志郎さんの回などはとても緊張感があって、誰にでもヘラヘラ話しかけられるわけではないのがよくわかります。
ブログの最後にシティーボーイズが出演した回を載せてるのですが、大竹まことさんが良い話を沢山されていました。
「貧乏」というテーマに雑談が流れていく中で大竹さんが言った
500円持って、メシ食わないで粋がって珈琲飲んでるのが楽しくてしょうがなかった
こういう話にグッときます。
なんてことない話のように聞こえて、実際にそうなんですが、違う。
いま自然に聞けるのはラジオくらいになってしまった。
テレビだとお涙頂戴か、苦労話になってしまう。
「『泣けるシーン』に使われる音楽」が流れたりして、解釈を断定されしまう。
大竹まことさんも仰る通り、「(テレビだと)こういう素喋りの場は不自然」なんだけど、視聴者の生活は、そっちの方が多いということが分からなくなっている。
実際に日常の会話なんて笑わそうとしない限り、これくらい沈黙や笑い声のないものだ。
テレビ番組が笑い声のSEを入れ始めてから、面白くない瞬間がないように装飾された物だけになって、視聴者は面白くないことを罪だと思い始めた、ような気がする。
こういう考え方は、歳を取ったせいなのも確実にある。
腹を抱えて笑える番組の存在は視聴者にとって重要だとも思っている。
でも、それだけではないですよね、とは言いたい。
この話はほとんどの人が既に理解していることで、本当に今さらではあるんだけど、自分が生まれる前や、物心が着く前のテレビ番組を見てると現状に対して、「なんかおかしくない?」と言いたくなる。
男性性だけでいうと、いつからか好きな男性のタイプは「面白い人」が上位になっていった。
もしかすると女性も悩まされてる人がいるかもしれない。
良い悪いじゃなくて不自然だとおもう。
これは、一時期言われていた「松本人志の功罪」の一つかもしれない。
自分は松本さんの大ファンで、お笑いという職業の素晴らしさを気づかせてくれた人なので罪だとは思わないけど、そうなんだろうなという感じ。
松本さんはいち早くこの問題に気付き、「笑い声がない時はない」作品を作るのもかなり早かった。
というか、自分の知る限りでは、松本さんの番組では、偽の笑い声は使われてないと思う。今は分からない。
一流のプレイヤーには関係ない話なんだけど、一流をテレビで見て育った人達がテレビにやってくるので勘違いの層は日に日に分厚くなっていく。
そしてそれが当たり前や常識になっていく。
言葉の変化のように、抗えるものではないのだけど、やっぱり不自然、違和感が生まれる。
かつて上岡龍太郎さんが「テレビは素人芸」を見せるところだと仰っていた。
「素人芸」をやっているのを、やる側も見る側も理解していた頃はよかったけれど、その中から、「テレビ芸」を一流のやり方でやる方が現れ始め、段々テレビが洗脳装置というか、教祖みたいになってしまって以降、一部の見る側やる側のどちら共が、勘違いすらしていない状況になったのかもしれない。
この話題は考え出すと、人によって違う「面白いとは?」の答えのない迷路に迷い込んでしまう。
人を笑わせる人を尊敬する気持ちは多分、一生変わらないけど、お笑い一強という状況は、お笑いという職業の為にもよくないと思っている。
これだって昔から言われてることだけど、それなのに、どんどんその傾向にあるのだから分からない。
識者が出てるテレビも大抵何かしらのキャラクターのようなものが目で、話し方でわかる人が多い。
「実際に頭も良いんだろうけど・・」という人が訳知り顔で座ってる印象をもつことがある。
視聴者として見ていても「この人って、もしかすると何も分かってないんじゃないのか?」と思うことがあるんじゃなかろうか。
で、やっぱり一部の識者の方は、例えば笑わせることをしなくてもいい番組にだけ出てる印象が、テレビを見てた頃はあった。これも今は分からない。
動画配信サイトの隆盛は、素人が無茶な事をして起こる笑いを楽しむモノによる事が多いけど、なかには「素喋り」で淡々とやって、笑うこと、笑わせることを強要されなくなったコンテンツが増えたことも大きいように思う。
「こういう番組が増えれば」とかは思わないけど、たまには見たい。
一流の人達が普通に喋ってるのって本当に面白い。
無理矢理笑わそうとしているモノに比べて遥かに得る物が多い・・と書いて気付いたけど、馬鹿のくせに(とか最後にいうのは逃げ口上だから不本意だけど馬鹿なので、馬鹿のくせに、いや馬鹿が故に)「得る物が〜」とか言ってるからこんな考え方になるのかも。
でもね、ロックも、ヒップホップも、お笑いも、作家でも、なんでもいいけど、心を奪われる人が多い文化の先導者は、常に聡明な人が多いのも事実だ。
そういう人達は、何かを自分に与えてくれたんだろうなと思うわけです。
これは一流以下を貶めてるつもりでは、全くないのですが、そういう風には伝わらんのかもしれません。
大竹さんの切り込み方、瞬時に場の空気を察する能力、きたろうさんのアシスト力、斉木さんの斉木さん力。
すげぇなぁ。
大竹さんて、ほんと口を動かさずに明瞭に喋る人だ。
あと、「懐かしいCM」ファンとしては、煙草のCMが熱い。番組中の喫煙も然り。
一社提供の長いCMがツボを突いてきます^p^
シティボーイズミックス PRESENTS 『西瓜割の棒、あなたたちの春に、桜の下ではじめる準備を』 [DVD]
- 出版社/メーカー: 日本コロムビア
- 発売日: 2014/04/30
- メディア: DVD
- この商品を含むブログを見る