この世の地獄
夜中Twitterを見てるとMobb Deep(モブディープ)のラッパー、プロディジーの訃報を知る。
初めて聞いた日から今に至るまで、いつ聞いても格好良いヒップホップが聞けるセカンドアルバム「The Infamous」はドープとか、黒い、煙たいと表現される音楽との出会いだった。
スラムの現状など知る由もない平和な日本で聞いていても、彼らのラップと重く暗いビートからニューヨークの深部を想像させられた。
暴力的に太っとい音にビビるスピーカー、とんでもなくシリアスな生活の中で生まれた切実な音楽なんだろう。
この曲はエミネム主演の映画「8マイル」でMCバトルのシーンでも使われている。
長い間「The Infamous」がファーストアルバムだと思っていた。
そして、多くのヒップホップファンが賞賛する3枚目、アルバムタイトルにもなっている「Hell on earth」は彼らの地位を不動のものにする。
今日は新聞各紙が「沖縄戦終結の日」について見出しを掲げている。
読売新聞社説に元沖縄県知事、大田昌秀さんの20歳当時の手記が紹介されていた。
海岸に死体が押し寄せていた。水葬の遺体を波がかき集めたかのように
殺された人、自決以外の選択肢を持たなかった多くの人たちが亡くなった。
6月になると、中学の修学旅行で訪れたひめゆりの塔を思い出す。
梅雨の雨の中とても重苦しい雰囲気で塔は佇んでいた。
小学生の頃、第二次世界大戦下の日本に興味があった私は家族旅行の行き先を決めていた親に頼んで広島に連れて行ってもらった。
きっかけは峠三吉さんの原爆詩集に収められた「序(にんげんをかえせ)」の衝撃だった。
無理にヒップホップを介した言い方で書けば、「にんげんをかえせ」という言葉は、リアルとハードコアの原体験だ。
まさに「この世の地獄」が日本人なら誰にでも伝わる言葉で描かれている。
そんなことを同時に思うアーティストの死だった。
合掌。