-kemurikikaku-

ママチャリに乗った小っちゃいオッサンの日記

さりげなく入れた

 

4/8はお釈迦様の誕生日。

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いつかの花まつり

 

1963年山口瞳原作、岡本喜八監督作品「江分利満氏の優雅な生活」を見た。

平凡なサラリーマン江分利満(えぶり まん)はつまらない日常を嘆き、飲み歩いてはクダを巻いて過ごしていた。ある夜、江分利は酔い潰れていたところを面識のない雑誌編集長らに連れられ、酩酊状態で小説家になることが決定してしまう。

とても気に入った。琴線を刺激するアニメーションなど特殊な編集技術を駆使した本編の抜粋をNetflixで見て一本釣りされた。この時代にこんな表現方法で・・という驚きと喜びに弱い私が、smokeです。おおきに。

映画は2週の公開が1週で打ち切られたそうだが、予告がテレビで流せたらそんなことなかったろうなと思う。アニメの絵はお酒のトリスでお馴染み柳原良平さんの絵が使われている。

https://www.netflix.com/jp/title/81422557

先に映像を見て雰囲気を感じて欲しかったがYouTubeになかったのでNetflixのURLを記載。

 

映画はとにかく小説を書く江分利の奮闘を現代的なコメディとしておもしろおかしく描くのだが、軸に反戦メッセージを強く打ち出していた。

ずいぶんいろいろなことがあったけど、もう馬鹿馬鹿しいことは起こらないんだろう

少し寂しげに語る江分利はどこか戦争時代を懐かしんでるような、しかしそんなことは絶対ない、疎外感に似た雰囲気を醸し出す。

63年の時点で戦争のことを話題にする人間は少なく、そんなこと言ってるのはオッサンばかりで、若者からは「昔話でマウント取りやがって」と煙たがられていた。戦地に赴き、もう帰ってこない男に送られた女性の手紙を読むシーンは見てるこっちもかなりジンときて、一筋の涙がきらめく江分利のおっちゃんの寝顔を映し出すが、酒席に朝まで付き合わされてる後輩社員は「知らねーよ」って感じで感動どころか完全にうんざりしている。会社の屋上で歌い踊り、バレーボールを楽しむ若者と隅でポツンと佇む江分利など、小説家に云々のスジと関係なく、各所でオッサンと若者の対比を映し続けているのが印象的だった。戦争を知らない第1世代に向けた、向けたい、独り言のようなオッサンの哀歌が聞こえる。

コメディ部分も普遍的な笑いだけど面白く、下宿人の外国人ピーターがお葬式の作法に困るシーンは髪型や服装の特徴からMr.ビーンみたいだ。と書くと面白くなさそうに思う人もあるだろうけど、随所に散りばめられたギャグシーンは今も生きているし、映画でよく見るあえてつまらないギャグを言わせてシーンとなるような笑いに比べると、ちゃんと笑わせようと客に向き合った正々堂々としたギャグに好感を持った。

小説の読み聞かせのようなシーンが多く、シンプルゆえ見せ方の妙技が目を奪い、話に没入させられる。

 

youtu.be

筒井康隆原作「ジャズ大名」が岡本喜八監督作品だった。調べると筒井さんや庵野秀明さんらがリスペクトしている監督だと知る。

 

36歳にしてオッサンの標本みたいな主人公・江分利満を演じる小林桂樹(こばやし けいじゅ)さんが軽妙で素晴らしい。のちに95年のジブリ映画「耳をすませば」で地球屋の主人の声優をしたそうで、時を越えすでに出会っていたことに気持ちが昂った。今日も最高の1日でした。明日はもっと最高の1日になるで!