-kemurikikaku-

ママチャリに乗った小っちゃいオッサンの日記

コロッケ食べたい?

 

逆を生かす。

俺はまだまだ強くなります。

 

2019年片山慎三監督作品「岬の兄妹」を見た

 

足の悪い良夫は自閉症の妹、真理子と2人で暮らしている。家計は常に逼迫しており、食べるのもやっとの暮らしが続くなか、良夫は身体障害を理由に現場仕事をリストラされる。2人でゴミを漁る生活はすぐに無理だと分かった。良夫はいつか真理子がお金をもらって男に体を許していたことを思い出し、妹を使った売春の斡旋をはじめる。

 

あらすじを読んだだけでハードコアな作品なのは決定的。当然内容も生やさしいものではない。この映画が重く感じるのは、それを無いことにしたい、しているからだ。戦争にはじまり、貧困も差別も障碍者の暮らしも、それらがそばにない時に、四六時中意識するのは難しい。

「考えさせられる」といったお決まりのセリフがいかに役に立たない逃げ口上なのか。考えてるフリをして、見て見ぬ振りをしていない風を装うのが精一杯。考えたくないことは見たくないことで、ない事にしておきたいことだ。それを責めるつもりはないし自分もそうしている。ただこうして直面した時の、この気持ちはいったいなんだろう。偽善からくる憐れみか?社会制度への怒りか?人の業みたいなところまで飛ばしてみるか?とにかく画面を見るしかない。

 

印象的なシーンで埋め尽くされたような映画なのだが、良夫の友達ハジメくん(春風亭昇太さんに似てる)が出てくる場面もすごく現実的で、いい温度だった。生きるために良夫が外した道理を、それでも叱りつけるしかない友達の気持ち。しかし面倒を見れるわけでもない、しかし止めなければならない。怒りや咆哮が快楽として消化されてしまうことがあるが、この場合はどうなんだろう。

悲惨な状況がずっと流れていくなかで声を出して笑える場面があったのだけど、その笑いも普通の笑いではないし、この状況下を生きてる人がやるからこそ滑稽に映る。松本人志さんが「笑いの中には切なさがある」というようなことを仰っていて、そんな笑える空気がずっと薄っすら漂っている。

 

食べ物をくれる一部の教会や、炊き出しをされている団体の人たちが「やらない善より、やる偽善」などと自らを貶める言いかたをする。そうでないと変な人がモゴモゴなにか言い出すからだ。そんな光景を目にするたびに、なんか変だよなあと思うのです。

 

youtu.be

楽しそうな真理子の切なさ。

 

主演お2人のインタビューも素晴らしかったです。

times.abema.tv

 

片山監督は「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督作品に助監督として参加している。「パラサイト」も格差社会のエグさを分かりやすく描いた作品だったけど、まだまだえぐれるといった感じか。見たことのない世界は慣れるまで落ち着かないように、映画もたまにおそろしい。今日も最高の1日でした。明日はもっと最高の1日になるで!

 

岬の兄妹

岬の兄妹

  • 松浦祐也
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