「NAS TIME IS ILLMATIC」を見た
ニューヨーク州クイーンズ出身のラッパー・ナズ(ナス)。
伝説化した1stアルバム「イルマティック」発売20周年記念のドキュメンタリー映画。
NASは勿論、アルバム制作に関わった有名プロデューサー/DJ陣らのインタビューが満載の一本。
このアルバムが発表された94年、日本では小室ギャルソンが大人気。
小沢健二 feat, スチャダラパーの「今夜はブギーバック」
Mr.Childrenの「イノセントワールド」
SMAP「hey hey おおきに毎度あり」等が発表された時期だった。
音楽業界は盛り上がり、商売繁昌なにわの商人(あきんど)やったわけです。
シネリーブル梅田、最終日の映画館は沢山の若手で賑わっていた。
映画「スヌープ・ライオン」を見たのも最終日だったけど、明白に人が多い。
それもそうだが、今風の太眉ちゃんがワラワラ居て驚く。
ヒップホップを聞いてる若い女子ってもはや都市伝説みたいに思ってたからだ。
スクリーンのある室内から漏れ聞こえる「イルマティック」の音源がとても新鮮。
場内はひと塊りの若者達が点でざわついている。
「スヌープ・ライオン」を見た時にも思った事だけど、
彼の音楽をこんなに大勢の人たちと聞ける事が何より嬉しい。
しかも、ここにいる恐らく9割の人が家のラックに
「イルマティック」を持ってると考えると楽しくなる。
大音量で「ワールド イズ ユアーズ」が格好よく響いてる。
たまらん。
上映が始まってからずっと眺めるに近い感覚で、薄ボンヤリと画面に集中していた。
すると、ドカドカとブーツを鳴らしながら3人の男が遅れて入場してきた。
顔にスクリーンの画面を映して嬉しそうにうしろを振り返り、誰かを探してる様子。
彼らは落ち着き無くソワソワと動いたり、笑い声を上げたりしていた。
「あー、この感じやなぁ」と凄く、何かがストンと腑に落ちた。
ナズは
働き者で真面目な母親とジャズミュージシャンの父親に育てられた。
ハウジング・プロジェクト(通称プロジェクト)と呼ばれる日本の府営/都営住宅のような
ちょっとした喧嘩に拳銃が出てくる街に安息はなかったそうだ。
上空からプロジェクト団地を映すと、アルファベットのXやYの形をしている。
不思議な形状の団地群でナズは親友を射殺され、弟は肩と足を撃たれた。
その日から音楽に対する姿勢が変わったという。
ナズ曰く「最低な暮らし」から脱出する為に。
エンドロールが流れる中、遅れて入場した若者の周りにどこからか人が集まっている。
どうやら1人は寝ているらしく「最低やな」と寄って来た女の子に笑われていた。
ヒップホップには絶望からの脱出みたいな雰囲気を感じる事がある。
別の側面にドロップアウト寸前の高校生みたいな危うい輝きを感じたりもする。