ミュージックスクエア
小学生の頃、NHK FMで放送していた「ミュージックスクエア」という番組が好きだった。
兄が先に聞いていて、一緒に聞こうと教えてくれたのか、勝手に一緒に聞いてたのか、確か平日の夜9時にラジオの近くで耳を澄ましていた。
几帳面な兄は番組が始まる5分前からチューニングを済ませ、厳かなクラシックが流れる前番組を静かに聞いていた。
ガチャガチャな弟もラジオにのみ兄の姿勢を真似して、ラジオ前は遅刻せず、五分前にはラジオの前に座り、冷静にチューニングをするようになった。
クラシック音楽に関しては、「東京フィルハーモニー交響楽団」という団体名だけを記憶している。
中村貴子さんがDJだった時代に聞いていた。
その後、理由は分からないけどDJは変わり、それからは聞いていない。
週末は番組タイトルは変わらず、内容だけリスナー投票のカウントダウン番組になっていて、その日を務めていた別の女性DJが全曜日を担当するようになったと思う。
僕ら兄弟は中村貴子こと、タカちゃんのDJが大好きだった。
DJが「自分の好きな音楽をかけて、自分の言葉で音楽を解説する」番組は、世界中、今はほぼ何処にも無い
とピーター・バラカンさんは言っていた。
90年代後半、タカちゃんはそれをやっていた。
兄がこの番組をお勧めする一番の理由として「曲が全部流れる」事を強く推していた。
普通ラジオでかかる曲はイントロが始まった辺りで曲紹介をして、1番が終わる頃にフェードアウト。
そこからDJがまた喋り始める形式がFM、AM関係なく多いと思うのですが、ミュージックスクエアは曲紹介をして、半秒空いたのち曲が始まり、完全に曲が終わったらまた半秒空いて、NHKFM特有の、バックミュージック無しでタカちゃんが喋り始めるというものだった。
この素晴らしさについて、もはや現代を生きる若者には到底説明し得ないのだけど、ようは一曲丸々カセットにダビングする事が出来るという寸法だ。
で、これは中村貴子さんがリスナーの事を考えてやってくれていた事だと思う。
「自分のおすすめ」曲を紹介をする時のお喋りや、屈託のない明るいトークから、音楽と、ミュージシャンに対して、とてもフラットで良い温度のリスペクトを持った人なのが小学生にも分かる、信頼の置けるDJだった。
今ではYouTubeやitunes、他にも様々な方法で当たり前に一曲丸々聞く事が出来るけれど、当時はラジオやテレビで聞いた曲が気に入ったら、CDを買って聞くのが当たり前。
しかし、若いリスナーの財布事情には限りがある為、自分の耳で感じた「良い音楽」をそのまま聞く事が出来ずに、忘れてしまう事がとても多かった。
そこを上手く解消してくれていた番組に今も感謝が尽きない。
お陰で小学生にしては、"ませた"音楽を知る事が出来たし、今も音楽を楽しむ事を忘れないでいられている。
去年のことだけど、とある占いに「2016年は自分のこれまでの年表を作ると良い」とあって、暇なので度々昔のことを思い出している。
昔は良かったな〜と、ついつい思い、ふけってしまう。
何かに繋がるのかしら。
当時番組でよく流れていた音楽で、兄が気に入って聞いていたのがサニーデイ・サービスとフィッシュマンズ。
今思えば、同じく小・中学生だった兄も、かなりませた耳を持っていたようだ。
ミスチルやB'z、スピッツからミッシェルガンエレファント、真心ブラザーズが来る番組にhideやL'Arc〜en〜Ciel、電気グルーヴなんかもゲストに来るのが面白い番組だった。
ブルーハーツがゲストコーナー最後に、誰にも言わずに突然の解散宣言をしたことでも一部では有名だ。
小学生当時の僕には理解出来なかったけど、10年以上経って、音楽仲間のCDラックから飛び出し、場の話題に上がるミュージシャンの曲が沢山かかっていた番組だった。
高校一年の冬に初めてスノーボードに行った時、現地で知り合った大学生のお姉さんと、これまで誰とも話したことがなかったミュージックスクエアの話題で盛り上がった想い出を甘酸っぱく思い出している。
調べて分かった事だけど、タカちゃんはバンドでメジャーデビューもしているミュージシャンだったそう。
マニアの方には嬉しい、ラブ・ポーション時代のゴリゴリ京都弁のタカちゃんと、ヤングたかじん!