-kemurikikaku-

ママチャリに乗った小っちゃいオッサンの日記

輝きを取り戻した

 

桜の方は準備万端みたいだ。

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夏も冬も余韻を持たずにいなくなる。

 

1932年小津安二郎監督作品「大人の見る絵本 生まれてはみたけれど」を鑑賞。

第二次世界大戦前の映画。戦争がなければどんな昭和になったのか、寸前の世界を見て史実の分岐点を夢想する。小津安二郎作品は1959年の「お早う」を見たきりでかなり久しぶり。カラーテレビが欲しい幼い兄弟を描く日常系の極みのような作風がすごく好きだった。今作も主人公は兄弟で、父親の出世と共に郊外へ引っ越してきたばかり。元々ヤンチャなお兄ちゃんは早速地元のいじめっ子たちとぶつかる。

まさかの無声映画で初体験の”活弁”が物語を進めてくれる。最近の録音かと思うほどクリアで聞き取りやすく、快活なテンポと言葉少なく完結なのも良い。自分が思ってたより活弁は分かりやすくて新鮮な体験だった。弁士の二代目・松田春翠(まつだ しゅんすい)さんは1987年に亡くなるまで、7000本もの無声映画を集め、保存し、上映するための会社を作った。声質がプロ野球の好珍プレーで声を当てるみのもんた氏をどこか思い出す。

物語後半、父の上司宅に招かれ16ミリフィルムの鑑賞会が行われる。普段から「偉くなりなさい」と立派なことを言ってる寡黙な父親が、カメラを向けられ変顔をして笑いを取る姿が映り兄弟が閉口するシーンがあるんだけど、昭和7年の変顔は一見の価値があった。面白いより不気味な、眉をひそめたくなる顔をしていて昭和初期の一般的なユーモアセンスなのか、コメディアンから指導があったのかなど気になる。どこかで見たことがあるような、ないような変な顔に満足した。子供も変なポーズをする事があり、この時の松田春翠さんのセリフが「しぇー」なので、活弁は昭和後期に録られた可能性が高い。

 

当然予告編はなく、YouTubeを検索すると5分くらい抜粋したものがあるので貼り付ける。

youtu.be

昭和初期は子供の面構えに圧倒されがち。8歳くらいで顔が成熟してるのなんで?

 

さっき錦鯉のラジオでたまたま知ったのだけど、新美南吉の「ごんぎつね」が「赤い鳥」に掲載されたのも1932年のことらしい。心を揺らす名作は若干18歳の頃の作品らしく驚いた。今日も最高の1日でした。明日はもっと最高の1日になるで!